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絶望の淵から [あいさつ・内輪話]

父の転勤で子供の頃は、主に岩手県内各地を転々とした私ですが
なかでも、三陸の海岸沿いに住むことに、強い憧れをもっていました。

理由の第一は、とにかく雪が少ないこと。積雪のない日のほうが多いくらい。
北国=雪が多いというイメージは、少なくとも三陸海岸では払拭されてしまいます。
*今回、被災地にしょっちゅう雪が降っている映像が映し出されるのは、
結構珍しいことなんじゃないかな。春先は比較的よく降るとはいえ

そして何より、海に面していて、開放的な気分にひたれること!
決して泳ぎは得意なほうではないけど(泳げない、といったほうが早いけど)
海を見ているだけで、気分が伸びやかになってきて、十分心の癒しになりますし。

リアスの入り江沿いに、こぢんまりとした港町が点々と続く三陸海岸。
おだやかだけど活気があって、のどかだけど山あいの村にはない、港町ならではの
賑わいもあって。

森林関係の仕事をしていた父でしたので、どうしても内陸部に住んでいた年数のほうが
長かったのですが、それでも、小学6年の4月~中学2年の5月まで、三陸海岸にある町で
暮らすチャンスを得たのは、私にとって貴重な経験となりました。

ちょうど思春期の頃。いろんなことを覚えたのもこの頃でした。
まあ30年以上も前ですから、今の子供たちにとっては、もっと早くから情報に
触れるであろう、取るに足らないことばかりでしたが。
星占いにバレンタインデー、そして洋楽。すでに解散していたビートルズのレコードを
友達から借りて、熱をあげたのもこの港町にいた頃。
そういえば、英国のバンド、クイーンが最初にブレイクしたのもこの時代でしたね。

ガリガリだった私は、ダイエットならぬ太りたくて、毎日チョコレートを食べることに
挑戦したけど、結局お小遣いが続かなくて挫折したり。
眉毛そりに失敗して、それ以来トラウマになって自分で眉毛の処理ができなくなったり。
R15指定相当の映画を見に行こうと約束したけど、当日自分だけ見に行かなかったら
後で先生に叱られた友達に恨まれたり。

もちろん、楽しいことばかりじゃなかったけど、振り返ればこの港町にいた頃に
楽しい思い出が集中していますね。
ですから、父の転勤で、海沿いから再び内陸部のほうに引っ越さなければ
ならなくなったときはダダをこね、精いっぱい反抗してました。

自分の経験からいうと、岩手県は広い県ですから、同じ県内でも内陸部と沿岸部では
風土も気質もかなり違うというか。ですから、避難所で生活している被災者が
たとえ近隣の市町村、あるいは近隣の県とはいえ、内陸部や日本海側のほうへ移るのに
抵抗を覚えるという気持ちは、とてもよくわかるんですよ。

もっとも、2~3年にいっぺんというすさまじい転勤生活のおかげで
地理や旅行、ひいては鉄道に興味をもつようになり、大学は地理学科に進んだのも
結局は運命的なものだったのかな。

今の震災関連のニュースを見るにつけ、テレビやラジオで流れる地名はほとんど
地図を見なくても、だいたいの位置関係や距離感がつかめる私。
だから例えば、福島県をひとくくりにして、会津地方にまで野菜の出荷制限をかけるのは、
個人的にはどうかなあと思ったりしているのですが。

そんな私も、この春で上京してちょうど30年。
小さい頃も愚図だったけど、それは大人になっても変わらないようで。

じつは、今春の出版を目指して、初めての自著(実用書)の執筆を手がけてたんですが
その計画が、白紙に戻ってしまいました。

正直なところ、正式な契約というのもなかったし
具体的なスケジュールも示されないままに書き始めたけど
原稿の催促を含め、向こうからずっと連絡はなかったし。うすうすと感じてはいました。

そして結局、今回の震災が決定的な出来事になったようで。
遅くとも自分の誕生日までに出すという出版の夢は、水の泡と化してしまいました。

3年前から話はあったんですが、その間の生活の糧となる仕事が
なかなか安定しなかったこと(事実上、半年ほど仕事がなかったことも)で
執筆に専念するという経済的・精神的余裕がなかなかつくれず。

加えて身内の病気や母の死、それらを乗り越えてやっと企画書が書ける
段階になっても、なかなかゴーサインが出ないもどかしさ。
それでも、本を出す夢があったから、どんなつらいことも我慢できたのに。

出版中止の話を聞いたときは、とてつもない絶望感に襲われて。
自分はこうしていても、何の役にも立たない、むしろ害悪ではないか。
そんな気持ちも、一瞬頭をよぎりました。

確かに、一番悪いのは、いつまでもグズグズしていた自分ですし、
被災者たちのほうが、はるかにつらい思いをしているではないか。
その程度で嘆くとは、頑張っていこうとしている被災者に対して失礼ではないか。
そういう声があるのは、わかっていますけど。

もっとも、このまま去ってしまっては、あまりにも現世に未練があるのも事実。
自分はこのままじゃ終わらない。もっとできるはず。
そういう思いは、変わらずに残っています。

3分の2のところまで原稿は書いてますが、とにかく最後まで書き上げて
あらためて売り込みに回ろうかと思っています。

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